柚木沙弥郎の染色 もようと色彩

先日、日曜美術館で紹介された柚木氏の個展を昨日、やっと見に行くことが出来た。
予想はしていたが、通常の民藝館とは違って大賑わいを見せていた。

柚木さんの人気の程がうかがえるが、もう少しゆったりと見たいと思いながら、柚木ワールドに引き込まれていった。

私は美術を鑑賞するのは、本の中でも柚木さんがおっしゃっているように、ほとんど一人と決めているが、友人とおしゃべりしながら鑑賞する人が多いので、少し耳障りでもあった。(偉そうですみません)

私は染色の中でも友禅染めを手掛けているが、以前柚木さんの個展を見に行くので、少し張り切って着物を着て出かけたことがあった。偶然ご本人が会場にいらして、自己紹介をする際に「友禅をしています」というと柚木さんは無意識だったとは思うが、女の人が趣味的なものをやっているのだろうというニュアンスを感じた。
ずいぶん前の事だが、その時の空気感を今でも覚えている。

確かにそのころは、問屋からの注文で、着物を染めていたし、食べるために友禅を学んだので、当然だと思っている。
だが、私が友禅を学んだ、大塚学院は大塚末子さんと、中村勝馬先生が創設者で以後その流れをくむ指導がされた唯一の友禅専門学校であった。

中村勝馬、山田貢、田島比呂子という後に人間国宝になられた指導者を迎えた、大塚末子さんの人脈、更には、中村勝馬という染色家の思想は、柳宗悦と同等であると考えられる。

今は当時と違って、着物が特別な階層の人の物になるか、安価な古着がフアッションの一つになっている。それはそれで否定はしないが、このままでは日本の民族衣装が消失する危機感を感じている。
38㎝×12mの絹地をほぼ真四角にたためる日本の着物という文化はもっともっと大切にされて良いと思っている。それを、現代の生活スタイルや、呉服店に媚びる模様などに押されて本来の着物からほど遠いものになってしまった。

少し手前勝手になりすぎたので、話を戻すと、染布をアートに引き上げ、マチスの切り絵の世界を彷彿とさせてくれた柚木ワールドは唯一無二であった。新作も沢山見られて感激した。

帰り道、偶然ある人と素敵な出会いがあったのも柚木さんのおかげと感謝している。
どうぞお元気で、私たちに嬉しい柔らかな風を届けてください。
必ず感じている人がたくさんいるはずですから!

長文失礼しました。未だに友禅と悪戦苦闘の    byけぃチュン