神保町の古本屋街
神保町の古本屋街を歩いていて一冊の本に出合う事は多々あった。
そしてその日、石原吉郎 著の「サンチョ・パンサの帰郷」という詩集を見つけページを開いた。
その中に、こんな詩があった、「われらのうちを 二頭の馬がはしるとき 二頭の間隙を
一頭の馬がはしる われらが暴動におもむくとき われらは その 一頭の馬とともにはしる
われらと暴動におもむくのは その一頭の馬であって その両側の 二頭のうまではない
ゆえにわれらがたちどまるとき われらをそとへ かけぬけるのは その一頭の馬であって
その両側の 二頭の馬ではない・・・・」
この文章は僕の身体をしびれさせた、腑におちた、そうなのかと思った。
本を買えるだけのお金がなかったから、ノートに書き写した。本屋の店主はそんな僕に何も言わなかった。
僕は十代後半の頃の、やせっぽちな時代を過ごしていた。
by ひいチュン