白い頁
その書物はまだ書きかけのまま時代の中に漂流する、作者のいない本らしいのです。
魔法の筆が現れて、文字なり模様なり譜面なりを書きつけていくのです。
豊かに実る田畑が書いてあったりする頁を開くと、其の通りになり。子供らが輪になって
踊っている頁を開くと、子供たちが広場で笑いながら踊っているのです。
人は高い塀をつくるよりも、田畑を開墾し、森を豊かな実りあるものにし、船を海にだして
必要なだけの魚や昆布を頂く。この書物には、そう書いてあるそうです。
槍や弓矢や鉄砲、大砲、爆弾、ミサイル、原発、は間だ書かれていません。この書物は
まだ答えを探しているらしく、白いままの頁はまだ幾枚も残っています。
この書物が今どこにあるのかは知りません、欧州の廻りの難民キャンプにあるのか、
自国だけが利益を得ればよいと考える国にあるのか、その国がくしゃみをすれば、
マスクを持って飛んでいく国にあるのか、分かりません。でもおよそこの本は、戦争の
役には立ちません、怠惰で、のんだくれで、権力に酔っている人にも、役立ちません。
再生のための書物を、魔法の筆は描きたいのです。この先まだ幾十億年つづく人間の
歴史のあるために。 (アイルランドのあるアニメーションを見て、触発されて書きました)
追記、でも僕も貴方も白い頁をまだ幾枚か持っていますよね。
by ひいチュン