マイヨール

 

10代の半ば頃から上野にはよく行きました、国鉄で小岩から秋葉原で乗り換えて

上野の公園口に出ます。

そこには西洋美術館と国立博物館とがあります。そして真っすぐ西洋美術館に

入るのです、そこは西洋の入口であり、驚くほどの宝物でいっぱいです。

入って右に行くと、彫刻作品の部屋です、ここにはロダンが多いのですが、

マイヨールの女性のほぼ等身大の裸体像が確か3体常設されていました。

「さわってはいけません」とあちこちに書いてあります、僕はいつも触りました。

いや、撫でまわしました、とても滑らかで、優しくて、冷たいぬくもりがありました。

僕はマイヨールに惹かれていました。もしこの裸体像がモンパルナスの夜の

エトワールと呼ばれた、キキなら、僕はキキに恋をした、ということかな。

マイヨールの写真を見たことがあります、立派な髭をたくわえた、しっかりとした

老人だった、ちょっと高村光太郎に似た風貌だった。

改築前のゆったりとした西洋美術館がすきだった、それも常設の時が、

だって普段の曜日には、ほとんどお客が居なかったのだから。

(さて、僕はまだ一部屋しか書けなかったけれど。)

追記:キキは画家のモデルはしたけれど、彫刻家のモデルはしなかったようです。

by ひいチュン