縮尺男

僕は長い年月を図面屋として過ごしました。最初は烏口でインク使用でしたが、

すぐにシャープペンシル使用に変わりました。図面用紙はA0からA4まであり、

ドラフターに用紙を張って描きます。描くうえで必ず縮尺することになります。

基本30分の1が一番人間が用紙を見て理解しやすく、その他はいろいろです。

しかし2000年には完全にデジタルに移行して、図面はCAD化しました。

縮尺の基本は100分の1になりました。描けるんだから良いだろう、という事

ですが僕には抵抗がありました。画面上では理解出来ますが、紙に出した時に

分かるのかと思いました。縮尺をどの位にするかは、図面屋のセンスです。

何を見て欲しいのか、何が重要なのかを伝えるための図面なのです。

なので図面屋の頭の中には縮尺定規がある、というお話でした。

しかしシャープペンシルやホルダーで描いている時代が図面の見栄えという

意味では一番、描きごたえがありました。もっとも鉛筆だこで中指が膨れ上がります、

それをナイフで削るのですが、すぐにまた膨れてこれが結構痛みます。

僕の中指にはいまだにその名残があります。

by ひいチュン