怪談話など
どうもお暑うございます。暑いときには怪談話など涼やかで
よろしいようで、私が小学5年生の時でございます。
其の頃は私は鍵っ子でありまして、夏休み少し前の時でした。
鍵を開けて玄関を入って、そして居間の戸を開けたその時、
立って居た、いや浮いて居たといいましょうか、居たんです、
怖い顔でじっと私を射すくめているんです、私は呼吸もせず
金縛り状態になったのです。直感で父方のおかあさん、つまり
祖母だと分かりました。6年前に癌で亡くなっています。
私は生前に2度会っています、一度は一緒にご飯を食べているとき
に私の箸を持つ手のひじが水平より上に上がったと、まあ不作法
だとひどく怒られました、もう一度は病の床に就いていました。
というわけで、私はチジミ上がりましたが、やがてすうーと消えました。
其の後の怖かったこと。そしてあろうことかそれから半年後に
また同じことが起こったのです。しばらくは家に帰るのが怖かったのを
覚えています、確か足は見えなかったと思います。この話は怖くって
母には言えませんでした、いや誰にも言ってはいけないような気が
していました。霊魂は死んで五年や六年は地上にうろついているという、
いやいや幽霊の存在なんぞ信じていません、信じていませんがこんな
事を実際に経験しました。そうそう幽霊に出くわす時間は時計の外に
あるように思えます、長くも短くも無い別の枠組みの中なのです。
6年程まえに東京芸大の美術館で幽霊画ばかり集めた展示会があって
出かけました。だいたいは三遊亭円朝コレクションだったもので、写真で
知っていた掛け軸が並んでいましたが、紅一点、上村松園作の「焔」が
ありました、源氏物語の六条御息所の生霊を描いた、傑作です。私は
しばらくの間、薄暗い空間の中でじっと見つづけました。
by ひいチュン